こんにちは~、アーティストchiguです。
手織りとオートクチュール刺繡で作品を制作する日々とその背景を
ブログに綴っております。
このブログについて、こちらの記事に詳しくご紹介しております。
ぜひお読みくださいませ。
皆さん、温泉卵はお好きですか?
私は相当好きです。
好きな食べ物をみっつあげてみて、と言われたら
チョコレート、温泉卵、納豆、で即答である。
長年これは変化がなくて、ほかの食べ物が入り込む余地はない。
納豆、チョコレートは冷蔵庫に常備が当たり前で毎日欠かさず食べる。
温泉卵は毎日欠かさず、というわけではないが、同等に好きだ。
このみっつについては順位をつけることは難しく、
とにかく横並びでダントツに好きな食べ物なのだ。
温泉卵との出会いはたぶん中学生くらいの頃だったと思う。
旅行で温泉に行った方からお土産に頂いて食べたのが初めてだった。
その「初めて」をその後忘れることが無いくらい鮮烈な出会いで
こんなに美味しいものがこの世にあったなんて!と感動したものだ。
こってりともつるんともとろんともした食感と、
卵の良いところが凝縮したような味。
付いていた出汁のタレをかけて、「うわ~、すごい」って。
温泉からのお土産で頂いた温泉卵。
当時は、温泉でしか手に入らないものだと思っていた。
それに、レストランなどでも「温玉のせ」って無かったと思う・・・たぶん。
とにかく、いつどうやってまた食べられるものなのか分からない存在だった。
その感動からしばらくして、「こうすれば家でも温泉卵が作れる」という記事を目にした。
しばらく経ってインターネットがやや普及してから見たのか、
テレビだったのか、雑誌だったのか。
内容は、
カップラーメンの容器にお湯と卵をいれて、お湯を張ったお風呂の蓋の上に置いておく、
そうすれば温泉卵が家で出来ますよ、
ということだったと思う。
あの、忘れがたい温泉卵が家で作れるとは!とその情報にすぐ飛びついて、
わざわざカップラーメンを買って食べて容器を確保し、試した。
もちろん出来なかった。
期待外れの少しだけ固まった生卵だった。
その後の私は「こうすれば温泉卵が作れる」情報を見かけるたびに
「今度こそ」と期待を込めて挑戦するようになった。
そしてその度に、だいたいはほぼ生の卵と対面し、がっかりする羽目になった。
インターネットが当たり前になると、当然そういった情報を目にする機会も増える。
試してはダメ、やっぱりあの温泉卵にはならない、の繰り返し。
そのうちきっちりした温度管理こそがコツなのだということが分かってきて、
それがいかに難しいことなのか、肌で分かるようになった。
美味しい温泉卵はデリケートで、ちょっとした温度変化で失敗するものなのだ。
そうなるとだんだん
「こうすれば温泉卵ができる、なんてこと、無いんだよ」という悟りの境地に入ってくる。
さながら「こうすれば金運が良くなる、なんてこと、無いんだよ」と
風水やらお参りやら散々試したあとに呟くかのような、
人生、次のフェーズに入ろうかとでもいうような佇まいで。
いつの間にか温泉卵はスーパーで買える当たり前の存在になり(いつからあったのかな~?)、
私の「おうちで出来る」情熱も冷めていった。
その心境の変化は、まあ、人生、次のフェーズに入ったと表現しても良いかも知れない。
私が思いがけずまた自家製温泉卵にチャレンジしたのは、
更に年を経て、真空保温鍋を導入したときだった。
保温容器に鍋を入れておくと具材に火を通せるくらい保温力が高い構造。
付属のレシピブックには、かの温泉卵も載っていた。
早速試してみると、それまでにない仕上がりで、だいたいは期待通りの温泉卵が出来た。
自家製温玉を追求し始めてこんなに長年経ってから、やっと出来るようになった・・・。
ちょっとした感動だった。ただ、やや難があって、感動は「ちょっと」にとどまった。
贅沢言うようだが、仕上がりにムラがある。
それに卵を室温に戻しておかねばならないのだが、それを忘れたら、もう食事に間に合わない。
つまり思い立った時にすぐ作れない。
そして卵の大きさや室温にきちんと戻っているかどうか、などの微妙な条件で
生っぽかったりその逆だったりする。
う~ん、惜しいね。ほぼ温玉は出来ているんだけどね。
私の中では自家製温玉に要求する完成度は、あの初めて食べた感動に直結していて
それには本当に、温度がしっかり保たれていることがすべてなのだ。
割ったときの「あ~、惜しい」もナンなんだよな、ということもあって
自家製温玉はまた遠ざかった。
ちなみにこの間に
たとえば「ゆで卵メーカー」的なものを買おうと思ったことはなかった。
狭いキッチンなので買うものには慎重で
卵だけのためのグッズで場所をとるという発想はなかった。
かと言って「お湯を注ぐだけ!」といったふれこみの単純な構造のものは
過去のガッカリ体験の上塗りになるであろうことが想像できて試す気にならなかった。
さて、そうして、2023年の初夏となった。
こちらの記事にも書いたが↓
今年は珍しくキッチン家電を続けて購入した。
そのうちのひとつが、再び思いがけず、
そして今度こそきっちりと私の「長い自家製温玉の旅」を終わらせてくれた。
今回は大満足で、言うことなし。
その家電とは、発酵食品メーカーだった。
そもそも塩麹、しょうゆ麹は常温でいつも作っていた。
甘麹は温玉ほどではないにせよ、
やはり正確な保温が難しく面倒であることからたまにしか作っていなかった。
今年になってから玉ねぎ麹も作るようになったこともあって
麹関係のものは安定した保温で短時間で作ってすぐ使いたいな~、
そうすれば甘麹だって簡単に美味しく出来るしな~と、発酵機を導入することにした。
サイズとデザインで私の選んだBRUNOの製品「コンパクト発酵メーカー」は
ヨーグルトや麹もののほか、低温調理が出来るように出来ている。
容器をセットするところに直接湯を入れることができるのだ。
付属の説明書にはまたもや、温泉卵が載っていた。
今となってはこれがうまく行くことはすぐに分かった。
だって、とにかく一定時間、正確な温度を保てれば出来るんだから。
小さな容積を電気で温めておく。そりゃ間違いないよ。ってね。
いや~、温玉との出会いから30年以上経ったよね。
BRUNO君製の温玉になってからと言うもの、殻を割った瞬間に期待を裏切られることはない。
お皿にちゅるん、と出てきて
黄身はこってりととろみ、白身はつるんと滑らかだ。
しかも素晴らしいのは、冷蔵庫から出したての卵ですぐ作れるところだ。
卵を四つ入れ、200㏄の水を入れ、さらに300㏄のお湯を注ぐ。
63℃、1時間にセットするだけ。
この手軽さも良いんだよね。
我が家は「サイズいろいろ卵」のパックを買っているが
今のところ大きさにも左右されない。
ちなみに先日記事にしたインスタントポットでも温玉は出来なくは無い。
が、試した結果、温度設定までは出来ないので
期待通りの仕上げを求めるといささか手間がかかるということが判明した。
それに温玉4つにこのでっかい鍋を出したり洗ったりと言うのはいささか大袈裟なのだ。
そんなわけで、我が家のBRUNO君は、ほぼ温玉メーカーとして存在している。
(もちろん、麹調味料も楽に作れるようになった、ありがたや。)
食べようかな、と思いついてすぐ作れるようになった温玉。
先月ウィルス性の胃腸炎になった際も(とほほ)
いつもの食事がとれるようになるまでの間、さんざんお世話になった。
温泉卵、いつだって美味しいよね。
ずいぶん長々と書いてしまった。
たった今、相方に「温泉卵の旅のこと書いたらすごく長くかかっちゃったよ」と報告したら
「それなりの思い入れのあることだから仕方ないよ」と
私の温玉旅の傍観者として理解を示してくれた。
これは想像でしかないけれど、
この自家製温玉を求めての試行錯誤、は、
私だけでなく、それなりの人数の人が経験しているのではあるまいか。
そして、そう大した経験でもないかと誰かと語り合って共有することもなく
でも情熱と手間をその都度注いだことでもある、
そのバランスの悪さから、
なんとなく記憶のなかに持て余しているエピソードなのではないだろうか。
この投稿を読んで、「あ~、自分もやったよ、それ」と
懐かしく思って下さる方がいると、この長文も報われます。
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