森の奥のまじない師の石、ギャップ、ギャップ、ギャップ

こんにちは~、アーティストchiguです。

オートクチュール刺繍、手紡ぎ&手織りなどなど・・・しております。


先日ご紹介した羊毛石」にまだはまっている。

だいたい、羊毛石って名前が良い(私がつけた名前です、その辺で通じる名前では無い)。

単純極まりないし、一方で字面からはなんとなく学術的な雰囲気が漂う。

雰囲気だけですが。

羊毛石。


第二弾を制作中。

写真では実物の持つ何とも言えない可愛さが伝わりきらないのが残念。

正直、オートクチュール刺繍のシリーズも美しさが写真で伝わりきれん!と思っていたけれど、この素朴なものの妙な良さを伝えるのは更に難しいな。


これまでずっと、ガラス素材や天然石で華やかな世界を作ってきた。


こんな感じとか。

懐かしいな、毛皮を合わせたんだっけ。


こんな感じとか。

これは本当に大物だった。

こういうのって同じこととか、同じようなものとか、二度と出来ないよなあ。


手法がオートクチュール刺繍に変わってからも華やか。光と色。


一方で、今、この子たち。

いや~、同じ自分が作っているとは思えん。

なんかね~、ぽてっとしていて、変な子たちだよ。


もちろん、華やか路線が大好きで主流なのは変わっていない。

色や光り方の取り合わせで出来上がってくるアイテムたちにふわっと心が躍る。


ちょうど3年前の今ごろ、織物をやってみたい!とかなりいきなり思い立って

衝動のままに教室に通うことを決めた。

その時にこれまで自分が扱う素材としてはほぼ未知のウールなどの感触を知った。

そして、布というものがもともととてもシンプルな構造をしていることを知った。


それまでの華やかで緻密な自分の世界とは全く違う感覚。

それにとても魅かれた。

織物と糸紡ぎ、そしてそれにまつわる素材を知ったことは

私の中に、それまでに無かった世界を広げることになった。

特に羊毛やその他の獣毛を触っていると「primitive(プリミティブ)」な感覚に心を持って行かれる。

原始的な、とか、太古の、とか、そんな意味だ。


やや奇妙な「羊毛石」を見たり触ったりしていると心がほんわり落ち着く。

なんというか、私の場合は犬をなんとなく撫でている感覚に似ているかも知れない。

人によって感じることが違うんじゃないかと思う。

ちなみに相方は「よく分からん」だそうな。

ただ、「プリミティブ」と彼も言っていた。


「羊毛石」は、森の奥に暮すまじない師が作ったお守り、みたいなイメージ。

誰かが薬の調合を頼みに小屋を訪れる。

窓際に「羊毛石」が並べてあるのが目に入る。

奇妙な模様のようなものが施された、コロンとした意味の分からないものだ。

でも心を惹かれて、まじない師に「これはなんですか」と訊く。

まじない師は「まあ、お守りみたいなものかな」と言う。

すごく欲しくなって、譲ってもらえないか、訊く。

調合してもらった薬と一緒に持ち帰った「羊毛石」は棚の定位置にコロンと置かれる存在となる。

長い時間眺めたりするようなものでもない。

ただ、ちょこちょこ目に入り、そのうち何度かは指先で撫でる。

不思議な安心感が指先から伝わってきて、流れる時間がちょっとだけゆっくりに変わったような感じがする。


そんな感じ。そんなイメージ。


色と光が華やかで美しい刺繍のアイテムも

こういう原始的でもっさりしたものも

パワーの方向性が違うだけで、同じような存在なのかも。

単純に気分を上げるものか、落ち着かせるものか、とか。

外に向かって進ませてくれるものか、内面と向き合わせてくれるものか、とか。


というわけで、まじない師的にひっそりと羊毛石を作りつつ

オートクチュール刺繍をワクワクと刺しているところ。



なんだろうね、このギャップがあるからますます楽しい。

自分の中で世界が広がるって

楽しいことが増えて、

これまで楽しかったことはますます楽しくなる、よね。

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