こんにちは~、アーティストchiguです。
オートクチュール刺繍、手紡ぎ&手織りをしております。
「蠱惑的」という言葉を知ったのは、だいぶ以前に読んだ江國香織のエッセイだったと記憶している。
なんじゃそら、と思って辞書をひいたようなひかないような。
「こわくてき」。人の心をあやしい魅力で惑わすこと、たぶらかすこと、だそうな。
その後十数年も、この言葉を実際使う機会には恵まれなかったけれど(日常会話でなかなか使わないよね)
先日、機織りをしていて「こういうの、蠱惑的っていうのかもな」とふとよぎった。
先日ご紹介した、手紡ぎ糸のブランケットを織っていたとき。
織りかけの布を手で撫でたときの、なんとも言えない感触に、うわ、となった。
どう言葉で表現したらよいのか分からない。
うっとり、とでも言うのかな。単純に気持ちいい?どうだろう。
うまく言い表せていないと思う。
このブランケットは経糸にややチクチク感があって、だからこそストールなどではなくブランケットにした。
つまり、高級感があったり、滑らかでゴージャス、とろけるよう、といった感じの心地よさではない。
でも私にとっては奇妙に思えるくらい心を掴まれるものがあって、
ただ、この感触をこの先も味わえるならもっと手紡ぎ糸を作ろうって
一気に「やられて取り込まれた」ようになってしまった。
縮絨した後も、つい先ほど、房を切り揃えてスチームをかけた後も、
触るたびに同じ感覚が訪れる。
蠱惑的。私にとっては。
正直、この糸たちに特別な思い入れがあったわけでもないから、こんな気持ちになるとは思わなかった。
自らの手で紡いで織った私だからそう感じるのか、
それとも手紡ぎ手織りのアイテムと言うのはそういう不思議な力があるものなのか。
強いて言えば、言葉にならない、もっと動物的で原始的な感覚なのかもな。
犬や猫って自分が毛におおわれていても、気持ち良い布とか編地とか、瞬時に感じ取る。
すぐ気に入ってそこで丸くなったり、離れようとしなかったり。
そんなのに似ているのかも。
そんな体験があって、これからもっと手紡ぎアイテムに挑戦していこうと思っている。
と言っても糸紡ぎは本当に時間がかかるから、
購入した糸で織るもの、手紡ぎ糸で織るもの、それぞれに合ったアイテムを織る。
昨日書いたとおり手紡ぎ糸はしばらくブランケットに集中しよう。
どんな糸がどんな織り方でどうなっていくのか、楽しみ。
昨日から初めてアルパカを紡いでいる。
ヤクの追加が欲しくて取り寄せた際、
ついでだし試しに、と少量をいっしょに取り寄せた。
思いがけずとてもとても細い繊維で、とても滑らか。
油断するとするすると気持ち良くとても細くなっていってしまう。
その気持ち良さに酔わずにある程度の太さを保つのにちょっと気をつかう。
私の知っているアルパカの編地は厚みがあってゴワッとしていたから意外だな。
細いんだから別のなにかにしようかな、とかすぐフラフラしちゃう。
糸紡ぎの奥深さってなんかこわい。